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飲食人と組織人。
ふたつの眼差しで外食産業に革新を。

PROFILE

サッポロビール株式会社

外食統括部フードビジネスサポート部

坂口 真

2003年入社。広島出身。実家が60年の歴史を持つ飲食チェーンを営んでいたことから、外食産業に興味を持つ。最終的には人に惹かれて、酒造メーカーであるサッポロビールに入社したが、外食企業多店舗展開支援の専門部隊であるフードビジネスサポート部に所属することで外食産業への関わりを深める。現在、最も注力しているのは居酒屋ビジネスの構造改革。飲食人と組織人、それぞれの利点を生かしてイノベーションを推進している。

※記事は取材当時の所属役職のものです。

実家の飲食店をサポートしたい

実家が60年の歴史がある飲食チェーンを営んでいるため、早くから外食産業に興味を持っていたという坂口氏。三男という立場のため家業を継ぐことは叶わないが、外食産業で働きながら、その知見で間接的に関わりたいとの思いがあった。メーカーや、サッポロビールで働くという選択肢は浮かばなかったという。そもそもお酒が飲めなかったので、無縁の会社ととらえていたのだ。ところが、ひょんなことから意識が変わった。サッポロビールの社員と出会い、強く惹かれたのだ。仕事を楽しんでいるさまが、格好良いい。こういう働き方が理想だと感じ、就職先として意識するようになった。そして同じ外食産業に身を置くより、俯瞰した視点を持ち得る企業で知見を養ったほうが家業をサポートできるのではないかと思い至り、入社を決めたのだ。

「お酒は飲めなくても、外食産業に対する思いは誰にも負けていないという自信がありました。それが伝わったのでしょうか。採用してもらったばかりか、入社から今日まで好きなことをやらせてもらっています」

いま身を置くのは、フードビジネスサポート部(通称FBS)。外食企業の多店舗展開をサポートする部署として業界に先駆けて設置された、新業態の開発から食材の提案、労務支援、財務提案、人材育成まで幅広く手がける専門チームだ。全国横断型の少数精鋭で全国の飲食企業店に貢献する。グループメンバー追加が決まったときの社内公募に迷うことなくエントリーした。やりたいことに挑戦できる社風のもと、家業を盛り上げる知見が得られる環境を手にしたのだ。

飲食人とサラリーマンの意識を
両輪でまわす

フードビジネスサポート部隊のメンバーは、一人ひとりが個人事業主のように自由意志で行動しているという。食に関わるすべてが仕事といっても過言ではなく、自分でアンテナを立ててビジネスの芽を見出し、顧客に提案する。坂口氏は昨年、自腹でベトナムとタイに飛び、寝る間を惜しんで現地で展開している日本食レストランをめぐった。トレンドやニーズをキャッチアップし、次のビジネスにつなげるのだ。こうした積み重ねがあってはじめて、専業者である飲食店オーナーとも互角に渡り合あえる。相手は一国一城の主。心血を注いでいる店を共に盛り上げるパートナーとして認められるには、オーナーと同じ熱源が求められる。組織に守られているサラリーマン的なマインドやスタンスが透けて見えれば、たちどころに切られるだろう。サラリーマン臭をどれだけ消せるか。そこに難しさと面白さがある。

その一方で、組織人であることの利も最大限に追求するという坂口氏。

「使えるものは、すべて使うがモットーです。たとえば個人で受講すると何十万円、何百万円という研修に参加できるのは、サッポロビールという大きな組織に身を置いているからこそ。飲食人の意識と、サラリーマンの意識を両輪でまわせることが、私の強みなんです」

そう話す坂口氏は、大きな組織につきものの調整業務でさえ、自分のやりたいことを推進する一助だと考えている。

「壁にぶつかることもありますよ。横槍が入ることも。でも、意見してくる方というのは、根底に愛があるんです。敵ではない。しっかり向き合えば必ず解決できるし、その方を巻き込むことができたなら、もっと高いゴールを目指せるはず。組織戦の理論で、どう握るか、どう巻き込むかを楽しんだらいいんです」

究極は社会貢献を目指す

坂口氏は、クライアントのことを取引先ではなく、取り組み先と称する。その心を訊ねると。

「取引先というと、そこには利害関係しかありません。そうではなく、クライアントの懐に飛び込み、同じ方向を見据える。相手が欲していることを自分の欲求に転嫁して取り組みを成し遂げる。それが、私が目指すあるべき姿です。大きな影響力を持っている会社に属していますから、本気でそこを目指すことで目の前のクライアントを、さらにその先にある社会そのものを良い方向に進めたい。究極は、社会貢献にいきつくと考えています」

実はいま、その手応えを感じるプロジェクトを推進しているという。ローンチ前のため多くを語ることはできないという。非常に残念だ。しかし、組織人らしく必要な調整をこなしながら、仲間を巻き込み、遠慮なしに推進しているというから、プロジェクトの全貌が明かされる日も近いだろう。実家をサポートしたいという個人的な想いが組織というフィールドを経たことで日本の外食産業にどのようなインパクトを与えるのか。大いに期待したい。