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遊び心あるわるだくみが
「大企業病」を凌駕する。

PROFILE

富士ゼロックス株式会社

オフィス事業統括部 群企画部
技術戦略グループ 

特命係 兼 新成長事業創出部

大川 陽介

2005年、SEとして富士ゼロックスに入社。仕事も人生も自分たちで楽しくしたいという思いから2012年に社内の有志によるネットワーク「秘密結社わるだ組」を立ち上げる。「触覚ハッカソン」「営業VS開発ファイトクラブ」など多くのイベントを開催し、社内外から反響を得る。2016年大企業有志団体をつなぐ「OneJAPAN」の立上げに参画。現在は、新規事業の共創型イノベーションの推進を行っている。

※記事は取材当時の所属役職のものです。

本気でやめようと思った
入社3年目。

新しく何かを始めたいと叫んでも、「ルール上できない」「リスクはどうする?」と、まわりからはそんな言葉しか返ってこなかった。いわゆる「大企業病」の閉塞感に嫌気がさしていた入社3~4年目。それが、大川氏の転機だった。

「サラリーマンって、与えられる仕事が多くて、それが嫌になってくるんですよ。居酒屋で飲んでる時の話題が仕事の愚痴になってきて。転職も考えました。でもある時先輩に相談したら『大きな会社なんだからいろんな仕事や人がいる。ほかの仕事を見てみたら?』と言われたんです。確かにそうだと思って周りを見渡してみました。すると、熱をもった面白い人がたくさんいることに気づき始めて。辞めたいという気持ちは薄れ、むしろこの人たちと一緒に面白いことをしたいと思うようになりました。現状がつまらないのなら、とにかくまず自分たちが面白いと思うことをやってみようと。そしてそんな思いに賛同する人同士がつながれば、また新たに何か生まれるんじゃないかっていう期待感も生まれてきましたね」

かくして大川氏は2012年、「秘密結社わるだ組」を立ち上げる。当初8名からスタートしたこの会は、やがて若手社員だけでなくベテラン層へも輪が広がり、営業、技術といった部署の垣根を越え、さらには社外の人も巻き込んでいった。「面白いことをやりたい」という熱気を帯びた人たちがどんどんつながり始めたのだ。結果、その熱は化学反応を起こし、ここからいくつもの新しい取り組みが生まれているのだという。

「酒の席での話題が完全に変わったんですよね。以前は愚痴だったのが、今は世界をこんな風に変えたい、あんなこともしてみたいって」

そう語る大川氏の目には、未来を変える大きなわるだくみが映し出されている。

外からのパワーを生かし
社内の閉塞感を打ち壊す。

そんな大川氏が最近手がけたのが「コンセプト共創プロジェクト」だ。多くのアイデアとそれを叶える技術をつなぐWemakeというプラットフォームを利用し、一般の人から商品コンセプトを募った。ユーザーの中にある自由な発想を掘り起こし、それを実際に商品化しようという試みだ。アイデアをブラッシュアップするプロセスでは、富士ゼロックス社内の意見を極力取り入れないよう努めたという。自分たちとは違う意見を取り込んで、既存の価値観にとらわれない商品を作りたかったからだ。ユーザーが面白いと思ったアイデアを尊重し、それを伸ばしていくことに注力した。多くの応募の中から選ばれ優勝したのは、アイデアファシリテーションロボットだった。現在は「共育委員会」と銘打って、顧客価値検証&事業性検証活動を、ユーザーやパートナー企業と「共に育てる」活動を行っている。今後オフィスコミュニケーションに一石を投じるプロダクトを作りたいと意気込んでいる。

「たとえば、ロボットを作りたいと企画書を作ったとしても社内でなかなか通らないんですよね。でもこういう形で、ユーザーがいかに求めているかということを先に明示できれば、それを旗にして社内の意見を変えていける。中を変えたいと思ったとき、外に協力を仰ぎ、その力を使って動かしていこうと思いました」

このプロジェクトを動かすのも、わるだ組のメンバーたち。彼らは部署も年代も様々だ。社内調整や外部への交渉の際に、メンバー一人ひとりの人脈がいきてくる。多くの人を巻き込んでいくことが、大きな変化を生み出すキーになることを、だれより大川氏が今一番実感している。

極度の人見知り。
だからこそ、与えられた機会には
全力でこたえたい。

機械工学の出身で、自らのことを超理系男子で人見知りと語る大川氏。幼い頃はいつも母親の後ろに隠れていたような子供だったという。「今でも自分からガツガツいくのって苦手なんですよ。でもその代わり、与えてもらった機会に対しては全力でこたえるようにしています。一つ一つの機会を大切にすることで、また次のチャンスが広がっていくんです」

こう語るのは、彼自身チャンス与えてもらえる喜びを知っているからだろう。大川氏の活躍ぶりを語る際には、数字だけにとらわれず独自の視点から大川氏を評価し、新たなチャンスを与えてくれた先輩や上司の存在が欠かせない。現在の上司である馬場基文氏もまた、彼に活躍の機会を与えた一人だ。コンセプト共創プロジェクトの企画も、会社としてのリスクを考えれば消極的な判断もありえただろう。しかし、それでも馬場氏はGOサインを出し、自らもリスクをとって大川氏と一緒にチャレンジする道を選んだ。「馬場さんが、『大川の提案はNOと言わないと決めている』と言ってくれたことがあります。そういうのはたまらなく嬉しいですよね」上司にそこまで言わせたのも、大川氏が一つ一つの機会を大切に、全力でこたえてきた結果があってこそだ。

「大企業病だからダメだ、というのは簡単ですが、見渡せば社内にも面白い人はいます。それに、これまで積み上げてきた歴史、ブランド、人のリソースといった財産は、ベンチャー企業にはないもの。僕らはこれを最大限生かさないともったいないなと思うんです」

ベンチャー企業にはマネできないイノベーションを起こすべく、大川氏は今日も新たなわるだくみを謀っているに違いない。