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好奇心と直感が武器。
正解のない挑戦を楽しむ。

PROFILE

森ビル株式会社

森アーツセンター 森美術館
東京シティビュー

企画・営業 チームリーダー

杉山 央

両祖父が日本画と建築で文化勲章をという芸術一家に生まれ、幼少期からアートや音楽を好んで育つ。学生時代からアーティストとして、街を舞台にしたイベントを企画。より大きなことができる場を求めて2000年に森ビルに入社。六本木ヒルズのイベントや森アーツセンターでの展覧会を手掛ける。現在は、六本木ヒルズを舞台としたアートイベントの企画と並行し、これから創られる街のことを考え、新しい文化施設を立案するプロジェクトにも携わっている。

街にいたずらを仕掛ける異端児。

新入社員時代の杉山氏はTシャツにジーンズ、そして金髪。「入社したときから、失格社員だったんで」と笑う。社内でも完全に浮いていて、人事部長に呼び出されて怒られたこともしばしばだった。しかし、不思議と直属の上司は、そんな振る舞いを許してくれていたという。

「その上司も特殊な人でした。枠から外れることを許してくれたのです。組織の中では、尖った部分を許容してくれる存在って大きいですよね。いま、面白い考え方をしている後輩がいて、僕もうまく伸ばしてあげたいなと思っています。」

見た目だけで尖っていたのだったら当時の上司も認めなかっただろう。しかし、杉山氏は、考えること、やること、すべてが異質だった。

杉山氏が大学院時代から続けていたのが、街を舞台にしたイタズラ感覚のアート企画だった。街を歩く人々の頭上にマンガのフキダシ映像が浮かび上がり自動追尾する装置をつくり、街を歩く人を楽しませた。また、自分でデザインした洋服やがらくた(発明品?)を販売するための特殊な自動販売機をつくり、原宿や渋谷のインテリアショップ等に設置しては、それが大人気となった。これらの数々のプロジェクトはファッション雑誌やカルチャー系のメディアに多く取り上げられ話題になった。

ユーモア溢れる街のイタズラ企画は、新しい街の現象をつくりだすことに成功したことで次々に有名企業や、他の作家とのコラボも実現させた。この活動を通じて、新しい映像技術に関する特許も取得した。

「学生の頃から、街とアート、コンピューターやテクノロジーが好きでした。街を使ったイベントも遊びレベルなら、個人で色々とやれました。けれど、もっと大きなことをやりたくて。それで就職先として選んだのが森ビルでした。」

手堅い企画と挑戦的な企画、
両軸で楽しむ。

森ビル入社後も、杉山氏は数々のイベントを成功させてきた。今では冬の風物詩となった六本木ヒルズけやき坂イルミネーションもその一つだ。当時、世界でも前例がなかったこのLEDを使ったイルミネーションを実現するために尽力した。また、マンガ・ゲーム・アニメの要素を、街のイベントに取り入れる新しい企画をつくってきた。参加者が探偵となり六本木ヒルズに隠された謎を解く「リアル脱出ゲーム」や、来場者が勇者や魔法使いとなって楽しむことができる「ドラゴンクエスト展」、一晩で1万人が参加したゲームアプリ「イングレス」を使った、街全体をつかって行なったリアルな陣取りゲームが、その代表例だ。そして記憶に新しいところでは、51万人を動員した「ジブリの大博覧会」や「セーラームーン展」など…。

また、新しいテクノロジーをつかったアート展示を体験するためのイベント「MEDIA AMBITION TOKYO」の立ち上げメンバーの一人として、5年連続で開催してきたことで今や東京を代表するメディアアートの祭典へと成長させた。

「やる前から、『これは当たるな』という手応えがあってしっかり結果を出せる仕事も、もちろん面白いです。でも、当たるかどうか分からない、失敗するかもしれないけどすごく新しくて爆発力がある企画にチャレンジするときが本当に楽しい。街全体を使って、みんなを巻き込み、驚かす。しかもそれを色んなクリエイターやアーティストと一緒になって企む。世界初で誰もやったことがない。そんなのが、もう最高ですね。」

もちろん、リスクに挑んで失敗した経験も少なくないという。しかし、ローリスクミドルリターンの企画でしっかり会社に貢献できているという確信を持てるから、ハイリスク・ハイリターンのチャレンジを楽しめると杉山氏は語る。その溢れるアイデアや行動力は、いったいどうやって生み出されているのだろうか。さらに聞いた。

制約なくフルスイングできる時間を持つ。

「新しい企画のオーダーが入ってから、さあどうしようかと考えるというよりは、常に考えています。休日も含めて。仕事につながるかどうかは分からなくても自分の知らないジャンルの集まりに顔を出してみたり、大好きなコンピューターやテクノロジーを使ったイベントを見に行ったり、友だちのクリエイターやアーティストと遊んだり。そういう日常の中で、企画のタネみたいなのが生まれて、常に頭の中にいくつか温められている状態なんだと思います。」

特定の趣味はないという杉山氏だが、1年前に友人に勧められたことをきっかけに、今は、生け花(池坊)にはまっているという。

「勧められたときは、まさかこんなにはまるなんて思っていなくて。仕事には色々と制約があるじゃないですか。新しい企画をやりたいと思っても、色んな観点で思うようにできないこともある。お金・好み・物理的な条件…。でも生け花は100%自分の思い通りにできる。誰にも気を遣わなくていい。フルスイングできる瞬間があると、自分の欲求が満たされてリラックスできるのかもしれないなと思っています。花を生けていると、『これだ』と思える瞬間があるんですよね。そこが仕事でハイリスク・ハイリターンの企画に挑むときと似ていて。周りの評価とは必ずしも一致しないところまで似てる(笑)。はまった理由は、そこにもあるかもしれませんね。」

特に、将来こうなりたいといった目標は持たず、好奇心と直感で進み続けていると杉山氏は語る。いま、杉山氏は、これからつくられる新しい街づくりのプロジェクトにも参加している。六本木ヒルズができて街は、大きく変わった。新しい街では、どんなイベントが繰り広げられるのか。杉山氏が生み出す驚きと感動に期待が高まる。