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遊ぶように働き
働くように遊べ。

PROFILE

東日本旅客鉄道株式会社

事業創造本部

村上 悠

2005年入社。入社以来、不動産デベロッパー部門で商業施設やホテル、オフィスなどの開発プロジェクトを担当。現在は渋谷の再開発プロジェクトを担当している。そのほか、新たな事業創造分野の開発をミッションに、地域活性化、子育て支援、環境保全など社会課題の解決と事業を両立させる企画提案を行う。また、社外でも防災減災研修事業を行うCommunity Crossing Japanの立ち上げなどの活動を積極的に行っている。

大企業のリソースをつかって
世の中に埋もれたアイデアを形に。

学生時代、建築系の都市計画事務所でアルバイトをしていた村上氏は考えた。「どんなに良いアイデアがあっても、意思決定側に正しく意思決定する人がいなければ形にはならない。それならば、世の中に埋もれているアイデアを、十分なリソースを持っている大企業で実現する人間になろう」と。

「自分で会社やNPOを立ち上げることも考えたんですが、JR東日本のような大企業が持っている強大なリソースを活かさない手はないと思って。資金、土地建物、人材、信頼…。そういうものを活かして、アイデアの種に水をあげるようなことをしていけば、世の中がもっと良くなるんじゃないかと思ったんです」

村上氏は今、それを体現している。森林保全を推進している社団法人と一緒に森づくりについて考え、国産材の家具を自社ホテルに導入することで日本の林業を活性化することを企画したり、まちづくり会社と一緒に、将来のまちづくりの担い手をその地域から輩出するプログラムを考案したり、子育て支援団体との交流の中で、駅ナカでの子育てイベントを開催したり。ベンチャー企業やNPOとの交流は幅広い。

「世の中にまだ知られていない企業や団体にも、物事の本質を捉え、他にはない価値を提供している人はたくさんいます。その人たちとどうパートナーシップを組んでいくのか。それを考えられる人間が、大企業側に必要だと思ったんです」。

一人で早くより、
みんなで遠く。

村上氏は、パートナーシップを組む相手を、どうやって見つけているのだろうか。意外なことに、仕事に役立つ人脈をつくることを目的に、どこかに行ったりイベントに参加したりすることはないという。

「人脈は結果としてついてくるものだと思うんですよね。興味のあることをやったり、自分の想いを発信したり、気になる集まりに行ったりしていると、気づいたら共感できる人とのつながりができてくる。それが仕事にいきることもある。もうね、公私混在。『遊ぶように働き、働くように遊ぼう』って周りにもよく言っています」。

社内のつながりも同じようにして生まれると村上氏は言う。その一例が、グループ会社横断で結成している『チーム・ファンタジスタ』だ。前述した森林保全の社団法人や、まちづくり会社、子育て支援のNPOとのプロジェクトも一緒に取り組んだ仲間だという。「ステーションをはじめとした会社のリソースを活かして、ファンタジーを実現する」という意味が込められている。

「入社してすぐ、一人で勝手に名乗ってたんです。一人なのにチーム(笑)。大企業って事業化して走り出してしまえば、リソースも十分にあるし強いんです。でも、アイデアを出してそれを育てる行為。事業化する前の段階が絶対的に弱い。つくりたい未来を想像、構想するファンタジーの部分をもっと語るところからやっていかないといけない。という想いがありました。最初はこっそりやってたんですけどね、想いに賛同してくれる仲間がだんだん増えて、今では30人くらいの規模になりました。会社の事業組織ではない有志のチームなんですが、いろいろ提案して結果も出ると、会社の方から『こういう課題に対して提案してほしい』『こういう目的の予算がある』って話がくるようになっています。新規事業開発の部署にいなくても、オープンイノベーションの仕組みがなくても、社員一人ひとりが志と情熱をもって仕事をつくることが当たり前になれば、絶対にそっちの方がいい。そんなイントレプレナーシップをもった仲間をどれだけ増やせるかが重要だと思っています。自分の周りにそんな仲間たちがたくさんいたら、きっと人生も楽しくなりますから。一人で早くもいいけれど、みんなで遠くに行きたいですね」。

やりたい仕事は、自分で呼び寄せる。

村上氏は今、渋谷の再開発プロジェクトに携わっている。コンセプトはどうするのか、どんな施設を入れ、どんなイベントを仕掛けていくのか。多くの関係者と議論しながら、渋谷の歴史、特性からくる可能性をふまえ、新しい街を創り上げていく壮大なプロジェクトだ。

「まさにやりたかった仕事。この仕事を任されたのは、これまでやってきたいろんな活動がちゃんと見られていて認められたからだと思うんですよね。やりたい仕事って、なかなかピンポイントではできないですよね。意に沿わない異動もあるし、やりたくないこともやらないといけない。そこで不満を持つ人も多いと思います。でも、本当にやりたいことを仕事にしたいなら、ちゃんと発信しなきゃいけない。言うだけじゃなくて、実行もする。本業以外の活動も含めていろいろ考えて、いろいろやって、その結果として、やりたい仕事が向こうからやってくるような状況をつくれるんじゃないかと思います」。

やりたい仕事を任され、充実しているように見える村上氏だが、毎年1回、会社に残るか辞めて何かをやるかを集中して考える「もやもや月間」を設けているという。

「なんとなく時間を過ごすのではなくて、節目節目でキャリアを考えることってすごく重要だと思っていて。自分の中のもやもやを意識的に整理します。苦しくなるくらい考えて考え抜く。でも考えた結果、毎回思うのは、この会社が嫌いじゃないということなんですよ。好きなことをやらせてもらっているし、『お前面白いな、応援するぜ』と言ってくれる人も多いですし。共感してくれる人がいるうちは、ここにいたい、そんな方たちに貢献したいと思う。そういう共感の輪をもっと広げて、いい仕事をつくりつづけたいと思っています」。