17

劣等感をエンジンに
頂点を目指し続ける。

PROFILE

株式会社鎌倉新書

プロモーション室

室長

濱畠 太

2018年入社。本田技研工業の子会社・モビリティランドからキャリアをスタート。プロモーションの基礎を修得した後、さらなる成長機会を求めて柿安本店、大東建託を経て、プロモーション室の立ち上げとともにライフエンディングの実質最大手・鎌倉新書へ。広告宣伝、広報業務に従事しながら、ビジネス書を中心とした書籍の執筆や、1000人のマーケッターからなるマーケティングコミュニティを組織するなど、社外にも活躍の場を広げている。

※記事は取材当時の所属役職のものです。

やらなかった後悔は
消すことができない

小学生の頃から、文章を書くことが好きだったという濱畠氏。クラスメイトが苦労する作文も10分ほどで書き上げ、TVCMをみれば構成やセリフが気になって仕方がないような子供だった。10代で、書くこと、とくに宣伝、広告、マーケティングの領域に自身の将来を思い描いていたという。得意だからというわけではなかった。この道しか自分を活かせない、ほかにできることがない、しがみつくような感覚だったという。だが、番狂わせがあった。難関大学の文学部に進んだが、1学年の夏で中退したのだ。

「ここで4年間を費やしても、なにも生まれないと感じたんです。学校の外でテレビ局のイベントなどを手伝っていたのですが、こちらのほうが手応えを感じることができました。どうせ学ぶなら実践的な形がいいという思いが強くなり、広報や販促について現場さながらに学ぶ専門学校に進むことにしました」。

自分が変わっているとは思わないが、必要ならば、他人と違う選択をすることも、誰も進まない道を選ぶことにも迷いがない。その先で痛い目を見ることがあっても、立ち止まらない限り得るものはあり、後悔も小さくしていける。しかし、疑問を感じながら現状に甘んじた場合の後悔は消すことができない。累積し、肥大する。そんな思いで信じる道を進んできたのだ。

組織に適応するために
社外の自分を創る

鎌倉新書は4社目の会社になるが、1社目、2社目、3社目と、一貫して上場企業でのマーケティング領域を歩んできた。

「マーケッターにとっては、商品やサービスがすべて。能力を超える成長を得るには、強い商品と一緒になって登っていった方が、一段飛ばし、二段飛ばしができる。転職の時はそれができる会社や商品、サービスをいつも選んでいます」

商品、サービスに嫁ぐくらいの気持ちだという。だからといって、企業力や商品力に乗っかればいいというものでもない。自己努力を両輪でまわすのは大前提だ。

「会社の中で学べるものは、いつか飽和状態に達します。僕の方が知っているという段階が必ずくるんです。だから、社外の活動に力を入れてきました。会社を見限ったということではありません。むしろ会社には敬意をはらっているし、組織に還元したいという気持ちが誰よりもあります」

組織に適応するために、社外の自分を持つというのが濱畠氏のスタンスなのだ。積極的に組織に染まるが、どうしてもそこからはみ出す自我がある。それを社外の活動で発散するように心がけている。社内と社外を使い分け、同時に自覚をもってつないでいくことが肝心という。

そうしたスタンスが結実したのが、文筆家としての活動や、1000人のマーケッターからなるマーケティングコミュニティの運営といえるだろう。書籍は5年で10冊を書きあげ、ターゲットに置いた層の支持を集めている。自ら企画し、ときには登壇もするセミナーは、回を重ねるほど参加者が増えている。副業が禁止の会社から合意をとりつけ、前例のない働き方をしている根幹にあるのは、有名になりたいとか、目立ちたいという自己顕示欲ではなく、組織人の理想を追求しようという想いなのだ。

エンジンは劣等感

書籍を売り上げ、セミナーに多くの人を動員し、テレビにも登場した。しかし、どれだけ成果をあげても、達成感に浸ることはないという。

「挑んでいる山の頂上が見えてくると、次に目指す山が見えてしまうんです。次から次と、成し遂げたいものがでてきて、突き動かされるように走りつづけている。終わりがないんです。そういうと、行動力がすごいと感心されることがあるんですが、そういうわけではない。積み残しの課題を、慌ててやっている心境。むしろ遅れてすみません、という感じなんです。書籍を出したときも、そうでした。感銘を受けた書籍の著者プロフィールをみたら、自分よりも若い人だった。彼と同じ年齢だった頃の自分は、書籍を出そうという発想がなかったと気づき、遅れを巻き返したいという一心で翌日には書籍の企画をまとめていた。そんな感じです」

濱畠氏は、自分を突き動かしているものの正体を劣等感という。圧倒的にすごい人が世の中にはたくさんいる。どれだけ挑んでも、挑んでも、自分の未熟さ、力不足に震えるような思いで前に進み続けている。劣等感こそ、ゼロから100をうみだすエンジンなのだ。

いまも目の前に、挑みたい山がある。マーケティングのプロとして、文筆家として、1000人のマーケッターを率いる活動家として、濱畠氏が次に目指す頂上はどのようなものだろう。想像がつかないからこそ、期待に胸が踊る。