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努力は夢中に敵わない。
未経験の熱狂に
身を置きつづける。

PROFILE

株式会社幻冬舎

編集本部 第三編集局

編集者

箕輪 厚介

早稲田大学第一文学部卒。新卒で内定をもらった就職先がリーマンショックで倒産。二度目の就職活動で双葉社に就職。その後、幻冬舎に転職し現在。双葉社時代、広告部にいながら、与沢翼氏から3000万円を引っ張って雑誌を創刊したことや、編集者一年目から堀江貴文氏、見城徹氏の書籍を制作するなど、未経験の熱狂で周囲が驚く実績を残してきた。

第一印象が最悪なタイプ

自身のことを、第一印象が悪いタイプと称する箕輪氏。中学一年の時には定年間際の先生から「40年間やってきた教師人生の中で、いちばんヒドイ生徒だった」と言われたことがあるという。変わった人間という自覚はないが、深く話したことがない人からは生意気だと思われがち。それは新卒で入社した双葉社でも一緒。「新入社員研修のときに、日報のタイトルを『マナー研修という名の茶番劇』にして、いかに無駄な研修だったかを書いたら当時の役員に尋常じゃないほど怒鳴られました」。

こういうとき、中途半端に迎合しようとすると叩かれるものだ。とことんまで突き抜ければ、誰もなにも言わないどころか、こういう奴だから仕方がないと認め始める。

そんな箕輪氏のキャリアで語り草となっているのが、新卒で入社した出版社で手がけた雑誌「ネオヒルズ・ジャパン」である。当時は広告部のイチ社員。当然、編集経験はゼロ。その状態で雑誌を創刊したことも無謀だが、責任編集長として据えたのが、胡散臭い存在として扱われていた与沢翼氏だったことも周囲を驚かせた。しかも、与沢氏からは3000万円もの予算を引っ張り、稀代のフォトグラファー レスリー・キーを起用した。これらの型破りな仕事は、怖いもの知らずの素人だからできたことだと振り返る。

はじめての挑戦だから
成し遂げられるもの

出版不況、雑誌低迷の時代と言われて久しいが、「ネオヒルズ・ジャパン」は3万部が完売。編集者として型破りなデビューを飾った箕輪氏は、その後も怖いもの知らずに邁進を続けた。ベテラン編集者でもおよび腰となる見城徹氏、堀江貴文氏の書籍を次々と手がけたのだ。周囲からはまだ経験不足だから止めておけと諭された。しかし、箕輪氏には確信があったのだ。

「『ネオヒルズ・ジャパン』を通じ、仕事をする上では、中途半端な知識や経験よりも、個人的な熱狂のほうが勝るということに気づいたんです。努力は夢中に敵わない。初めての挑戦だからこそ、成し遂げられるものがあると感じたんです。その判断は間違っていなくて、見城さんの本にせよ、堀江さんの本にせよ、書籍編集の経験がなかったがゆえに、がむしゃらにできました。逆に、見城さんの本をやる上で、過去の経験を拠り所に予定調和の仕事をしていたら、確実に失敗していたと思いますよ」

やりたい気持ちと危機感の掛け合わせ

箕輪氏の目下の課題は、いかに未経験の状態をつくるか、門外漢の環境に身を置くかである。見城氏、堀江氏の本を、再び作るにしても、1冊目の本と同じ熱量でつくるのは無理だと言う。だからこそ自分が初心者になれる場を意識的に探しにいく。これは、自分で自分の人生に飽きないためでもある。今では本を作るだけではなく、オンラインサロンやリアルイベントを通して著者のコミュニティを作ることにも力を注いでいる。常に新しいことをやりたいという好奇心と、このままじゃダメだという危機感。その掛け合わせが、箕輪氏を次の挑戦へと向かわせる。

「4月10日から経済ニュースアプリ『News Picks』とコラボレーションした「NewsPicksアカデミア」というサービスを始めます。僕自身、特別にネットに強いわけではなく、むしろ、少し前までガラケーを使っていたし、大学では手書きでレポートを書いていたアナログ人間です。でも、何かを成し遂げようというとき、知識や経験なんて必要ないんです。自分がワクワクしてビジョンを語っていれば、自然とその道のプロや優秀な人たちが集まってくるもの。だから、分からないなりにまず手を挙げる。走りながら軌道修正をすればどうにかなります。」

努力は夢中に敵わない。常に熱狂できる状態に自分を持っていく。そんな箕輪氏が、勢いを失くして久しい出版業界にどんな風を吹かせるのか。大いに期待したい。