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メディアの力で
世界のチームワークを
向上させる。

PROFILE

サイボウズ株式会社

ビジネスマーケティング本部
コーポレートブランディング部

サイボウズ式 編集長

藤村 能光

WEBメディアの編集者を経て、マーケティングを極めたい、ひとつの価値観を長期に渡って伝えていく仕事をしたいという動機からサイボウズに。オウンドメディア「サイボウズ式」創刊時に、メディア経験を買われて編集者に抜擢。編集長に就任した現在は、として書籍の編集も手がけるなど、活躍の場を広げている。

 

 

聞き役に徹する編集長

新卒で入社した会社で、編集者としてキャリアをスタートさせた藤村氏。その当時の編集長から、仕事に臨むマインドやスタンスを学んだという。

「私はもともとガツガツと前にでていくタイプじゃないんです。それもあって社会人1年目の頃は、ひたすらやるべき仕事をこなしていました。そのうちに、自分だからこそできる企画を意識的につくっていかなければと感じるようになりました。新しい編集長が就任したタイミングで、自主的に企画を提案していたら、「おもしろい」と言ってもらえて、いくつも企画を実現することができました。それで気づいたんです、そうか自分から働きかけてもいいんだって。当時の編集長のスタンスは『藤村くんがやりたいことをやったらいいよ』と背中を押してくださったうえに、ミスを起こしたときは私に代わって責任をとってくださるなど、指示は出さずにメンバーの自発性を引き出し、意思決定できるように導いてくださったんです。あのときの経験が、今の仕事のマインドやスタンスに大きく影響しています。自分の働き方だけでなく、編集長としてメンバーと接する際のマネジメントスタイルにもつながっています」

そんな藤村氏が編集部のチームづくりで意識しているのは、聞き役に徹すること。編集会議では、井戸端会議のようなフランクな場づくりを心がけている。雑談のように企画のアイデアをだしあい、テーマを投げかけ、メンバーの意見を求めるのだ。そのプロセスで相手をよく観察するのも、藤村氏ならでは。その人がどんなことに興味があり、どんな価値観の持ち主で、どういうテーマを投げかければ活発な意見を引き出せるかを見極めてファシリテーションしていく。アイデアは無から生み出せるものではない。もともとあるものの足し算や掛け算、ズラしから生まれるもの。だからこそ、編集部に集った人の多様性を尊重することが、アイデアを創発するうえでの近道だと考えているのだ。

KPIでは見えない
新しい価値を追い求める

藤村氏のもうひとつのこだわりが、オウンドメディア『サイボウズ式』を運営するうえでKPIを定めないという点である。Webメディアの多くがPVをはじめとする数字をKPIに掲げる中、異色ともいえる編集方針を貫いている。

「私自身は数字を把握していますが、数字を取ることをチームの目標の最優先にすることはありませんね。数字だけで人は動かず、チームのビジョンに向かって人は動くと思っているからです。数字のための企画をつくってしまったら本末転倒で、新しい価値を生み出すためには数字にとらわれすぎてはいけないと思うんです。いちばんに読者のことを考え、読者に読んでもらう企画にするにはどうしたらいいかという発想が先にくるべきです」

そのぶん記事の反響は精緻に見ていく。読者のリアルな声を拾いにいく。こんな反応があったという具体的な内容は、編集部だけでなく、全社に共有することもあるという。そのうえで、違う部署の人も交えて、反響の一つひとつについて丁寧に議論する。全社的なコミュニケーションに発展することも少なくない。たんなる結果報告ではなく、自分たちが世の中に投げかけた問いに対する反響をもとにコミュニケーションし、そこで得た気づきを再び企画にして、メディアに還元する。読者に読んでもらう記事を配信して、読む価値のある記事をつくるために、KPIでは見えないものを追い求める。それが藤村氏の編集方針だ。

変化する自分を受け止めてくれる組織

サイボウズという会社は、チームワークの向上に寄与するクラウドサービスのグループウェアを提供しているのだが、目指しているのは企業ごとのチームワークだけではない。世界中のチームワークの向上だという。そうしたビジョンを発信するために生まれたのが、オウンドメディア『サイボウズ式』なのだ。メディアコンセプトは『「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト』だ。

「サイボウズのブランドを創っているという意識でメディアを運営しています。その際、心に留めているのは独立性です。会社におもねるようでは面白い記事は書けませんし、企業の枠を超えたチームワークを推奨するという観点では、サイボウズという一企業の主張を超えた、フェアな視点を持たなければなりません。極論ですが、サイボウズが不正を働いたときには、メディアとして公明正大に言及しなければならないと思っています。同時に、会社の枠を超える取り組みにも意欲的です。編集会議に社外の方を招いたり、私自身が複業に挑戦したり、大きく世界というチームの中で、自分の知識やスキルを活かす働き方を示したいと思っています」

会社の枠組みを外す挑戦を重ねる藤村氏だが、サイボウズという会社に対する愛着は逆に増しているという。やりたいことをやり、それによってどんどん変わっていく自分を受け止めてくれる組織であり、いつか会社を飛び出すことになっても、ビジョンのもとにコラボレーションできる関係性があると確信しているのだ。サイボウズという組織の独自性をフルに活用しながら未踏の領域に踏み込む藤村氏の今後に注目したい。