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気づくこと。動くこと。
その根底に、
熱い情熱を抱きながら。

PROFILE

株式会社ぐるなび

加盟店営業部門 戦略営業ブロック
法人営業グループ

チームリーダー

小沢 圭太 

2002年にアルバイト入社。当初コールセンターに配属され、中国語が話せたことで、ぐるなびとしてアジア初進出となる「ぐるなび北京版」の立ち上げメンバーとして企画部への異動と共に、社員へ。2004年、飲食宅配サービス「ぐるなびデリバリー」を立ち上げ、爆発的に事業を拡大させる。現在はぐるなびの加盟店や、シェフ、秘書などのネットワークを使った新規事業、サービスの開発を通じ、世の中に新しい価値を創造している。

※記事は取材当時の所属役職のものです。

アルバイトから
『ぐるなび北京版』の
立ち上げメンバーに

ぐるなびといえば、飲食店の検索サイトを運営する会社と認識している人がほとんどではないだろうか。確かに基幹事業ではあるが、それは氷山の一角でしかない。およそ6万店の飲食店・シェフ・生産者・秘書とのネットワークを基盤に多角経営を行うIT企業であり、広告代理業、通販事業、BtoB向けのソリューション事業など幅広く手がけている。人と人、モノとモノ、そして情報をつなぐことで独自の価値を提供してきた歩みは、同時に日本におけるインターネットの歴史ともイコールであり、黎明期からその道を切り拓いてきた企業としても知られている。そして、いまでこそ大企業として組織風土も整っているが、かつてベンチャー企業ならではのスリリングな環境もあったという。入社して15年、当時を知る小沢氏は懐かしそうに振り返る。

「私はアルバイトから正社員になった人間なんです。大学を卒業後、中国の凄まじい発展を体感したくて現地に飛び、大学に入学し、中国語を学んだ。2年後に帰国し、派遣をしながら貿易系の就職活動中、たまたま出会ったのが、ぐるなびのコールセンターの責任者だったんです。元々貿易関係での仕事を希望していたのですが、その責任者の下でしばらくアルバイトすることにしました。そんなある日、突然社長から会議室に呼ばれて『この人と中国語を話してみたまえ』といわれたんです。当時は小さな会社だったので、私が中国にいたことを社長も知っていたんですね。促されるまま話したら、同席していた中国人が『うん、大丈夫』とうなずくんです。それで即決、私は企画部に正社員として異動し、ぐるなびとしてアジア初となる『ぐるなび北京版』の立ち上げメンバーになりました。いまの弊社では考えられない、ベンチャーそのものの展開でしたね」

不採算事業を
一点突破の秘策で再生

アルバイトから北京版コンテンツの立ち上げメンバーに。普通なら尻込みしそうな展開だが、激動の中国に身を置いた経験を持つ小沢氏はその状況を存分に楽しんだという。もちろん苦労は数えきれなかったが、無事に軌道に乗せることができた。しかし、息をつく暇もなかった。

「今度はデリバリー事業の立ち上げというミッションが降ってきたんです。宅配寿司やピザをデリバリーするポータルサイトをサービス開発からすべて手がけるというもの。しかも、人員は私と派遣スタッフ1人のみ。上長はいましたが、いい意味で放任主義だったので、先輩方の意見を聞きつつ、ゼロから自分でつくりあげました」と笑う小沢氏。

実際に走り出してみると、筋がいい事業とはいえなかったという。どうにも採算があわなかったのだ。普通ならここで、自分が考案したビジネスモデルじゃないと愚痴のひとつもこぼしたくなるだろうし、投げ出したって不思議ではない。ところが小沢氏はというと。

「突破口を求めて今までの取引データ全てを分析し、脈のある領域に一点突破の網をはることにしたんです。それは意外にも製薬会社のMR(医療情報担当者)で、営業先のドクターに差し入れ用の弁当を買うというニッチなニーズがあったんです。MRが自分の時間を費やして店やメニューを開拓する負担を抱えていたところに、ぐるなびが介在し、宅配に参入していないレストランの加盟を促進し、それら店舗のお弁当を掲載したお弁当カタログを作成。MRの営業先である医療施設で手渡しするサービスへと大きく舵を切ったんです」

サービススタートにあたり、MR向けのコンサルタントの元で一から勉強し知見を貯めることができた。それを活かし、そこからわずか3ヶ月でローンチ。爆発的に業績をあげ、社内の電話回線がパンクする逸話を残しつつ、ぐるなびの屋台骨のひとつにまで成長させたという。いまでこそ外食産業の宅配事業といえば話題のサービスがあるが、ぐるなびでは十数年も前に生まれ、進化を重ねてきたサービスなのだ。

コンクリートさえもぶち破れ

小沢氏が歩んできたフィールドは自ら選んだ場ではない。まさに置かれたところで咲いてきた感がある。もっといえば、咲くにおさまらず、その土壌さえも耕してしまうような人物といえるだろう。そう伝えると、確かにそうですねと笑う小沢氏、そのうえでさらに自分を「飽きっぽい性分」でもあると言葉を続けた。

「宅配事業も爆発的に伸びたあたりから、もう充分かなという気持ちが湧いてきて、いまは別の事業に注力しているんです。ぐるなびの競争優位性であるネットワークをもっと活用できないかというのが目下のテーマですね。たとえば私たちはシェフや秘書のネットワークも持っています。それぞれのネットワークをベースに新しい価値を創造できるのは、ぐるなびという組織ならではですから」

これまで降ってきたミッションに最大限の結果で応えてきた小沢氏に、ついに自分発で挑戦したいことが見えてきたのだろうか。そうたずねると

「いいえ、実はやることはなんでもいいんです。事業として新しく、世の中をあっと言わせるようなインパクトのあるものならなんでもいい。主義や志向よりも、どれだけ新しい価値を創造するかに興味があるんです」という。

話を聞きながら、小沢氏のような考えを持つ人は多いだろうと感じた。しかし、誰もが同じように結果を出せるわけではない。置かれた場所に馴染めず枯れてしまう人も多いし、そこから自発の芽を育むとなると、いっそうハードルは高いだろう。なにが違うのだろう。

「デリバリー事業のときに感じたことですが、気づくということと、それをちゃんと行動に移すということでしょうか。ベンチャー企業的な当時は、置かれた環境それぞれに、やりたいことを見出し、自由にやらせてくれる環境がありました。そうしたなかで磨かれた資質だと思います」

それでいうと大手企業になった現在は、足枷をはめられた状態なのかもしれない。しかし、小沢氏は、なんでもないことのように笑う。

「確かに叱られることは増えましたね。また、おまえか!って大目玉をくらうのは、しょっちゅうです。ただ、やりたいことは通してますよ。相手も協力してくれる。結局、情熱なんじゃないでしょうか。情熱がないと誰も聞く耳を持たない。でも、こいつ熱いなって思うと協力したくなるんだと思うんです」

そう語る小沢氏に、ぶ厚いコンクリートの隙間から果敢に芽をだす植物の像がかぶった。障壁を突き破り、次にどんな花を咲かせるのか。大いに期待したい。