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布石を、打つ。
新しい未来へ向かって。

PROFILE

キユーピー株式会社

経営推進本部 経営企画部
事業企画チーム

チームリーダー

宮田 篤志

1996年 亜細亜大学 法学部卒

1996年新卒入社。マヨネーズの生産現場からキャリアをスタート。工場、本社と場所を変えながら生産管理の仕事を10年近く経験した後、現部署へ異動。社内初の試みである新規事業社内公募制度「Try!Kewpie (現Kewpie Start Up Program)」を発案、導入する。安定志向の社内に風穴を通し、社員が楽しくチャレンジできる社風を目指す。業界を問わず社外の人脈づくりにも精力的に取り組んでいる。

あのタイミングじゃなかったら、
この制度は
生まれてなかったですね。

異動は突然に降りてくる。生産現場から生産管理と、ものづくりの現場にいた宮田氏が新規事業の立ち上げを担う現部署へ異動になったのは、2008年のこと。大きなターニングポイントだったという。新しく着任した部署ですぐ、宮田氏はM&Aや他社とのアライアンスの窓口を担当することになる。もちろん当時は、そんな知識など持ち合わせていない。会社としてもまったく新しい取り組みだった。

「窓口ができたことで銀行や金融関係の方がいろいろ案件を持ってきてくれます。わからないなりに対応していく中で、どうやったら新しい価値を生み出せるか、考える力が鍛えられました。M&Aとはつまり企業と企業のマッチングなのですが、一見関係なさそうな組み合わせからどんな可能性を見出していくかが重要です。候補になる企業の強みを探し、それをうちのこの部分と掛け算したら、1と1で3になるぞ、という具合に。とにかく考えないと仕事にならないので、ずっと考え続ける日々でした。」

目の前の仕事に真摯に向き合うことで、0から100を生み出していく力に磨きをかけたという。ちょうどそのころ、中期経営計画の作成にも取り組んでいた宮田氏。強固な基盤・安定した事業ベースを持つ同社ではあるが、さらなる成長を目指すためには、新しい“何か”が生まれてくる仕掛けが不可欠だと感じていた。宮田氏の頭には、新規事業の社内公募制度の草案が浮かんでいた。

「中期経営計画の中に、成長のための『将来の布石』をみんなで考えていこうという文言を入れてもらいました。明確な何かでなくていい。まずは種を見つけるところから始めようと。これを明文化したことで、じゃあ具体的に何をやっていくのか?という話になりますよね。そこで、新規事業の社内公募制度をもってきたんです。」

タイミングが良かったと笑いながら話す宮田氏だが、新制度の布石を経営計画の中に打つ巧妙さはさすがである。何かを生み出そうと考え続けている人のみ、ここぞというタイミングが見えるに違いない。宮田氏が考案した新規事業の社内公募制度は、現在「Kewpie Start Up Program」という名前で運営されている。

自分の立ち位置を、自ら正す。

新鮮な目線と発想力をもって、新たな事業の種を見つけていく。いわゆる発想やアイデアありきの仕事は、それまで生産畑で宮田氏が培ってきた課題解決型の仕事の仕方とは逆をいくようにも思える。

「新規事業を考えるときに、すごく楽しいゴールイメージが浮かぶ人と、そこに至るまでの課題点がばーっと見えてくる人がいるとすれば、私は完全に後者です。どこが問題になるかがすぐ目に浮かぶ。元々ゴールまでのプロセスを作ることやプロジェクトの管理をするのは得意ですが、それありきにならないよう、もう1つの顔を持とうと意識的にやっていますね。」

後方で問題点を睨む目線は残しながらも、とにかくまずは前に進んでいくためのアクセルを踏むようにしているのだという。さらに、自分自身を含めて常に物事を冷静に見つめる宮田氏ならではのポジションチェンジも実行した。

「もともと圧倒的な個性を持った人っているんですよね。最初は自分がそうなろうと一生懸命やっていたんですが、自分がそれを担うより、社内に隠れた才能ある人をあぶりだし、その人たちが活躍できる環境づくりに注力すべきだと思うようになって。それで、途中から自分のスタンスを変えたんです。私は、出てきたアイデアの種を一緒にぐっと固めて、次のステージへとつなげていく。社内の投資家じゃないですが、ビジネスの種を見つけて、どこに予算を投じていくか。それを考え動かしていく役に徹しています。」

見たことないアイデアも
実現する術を求めて。

安定した大企業の中では、新規事業への熱が持続されるケースは珍しいと言えるだろう。そんな中、あえて組織を変えていこうする宮田氏の胸にある想いとはなんなのだろうか。

「うちは、基本みんな真面目で誠実。堅実なイメージです。でも中には、チャレンジ精神や斬新なアイデアを求めている人もいる。そういう機会さえあれば、いろんな声があがってくるんですね。これは、制度を作って初めてわかったことでした。しかも、聞けば聞くほど、強い想いをもっている人もいる。私としても、ここまでいろんな人をたきつけて、想いを引き出しておいたんだから、ちゃんと形にしなきゃダメだろうと(笑)。それに、いろんな課題をクリアして進んでいくのは、やりがいも大きいですね。自分一人ではなく、誰かと一緒に越えたものなら、達成感は何倍にもなります。」

社外の人との交流も精力的におこなっているという宮田氏。あらゆるところにアンテナを張っておくためだという。地方自治体、不動産会社が一緒になって手がける街づくりプロジェクトに顔をだしたり、暮らしのIoTを推進する「コネクティッドホームアライアンス」に参画したり。これまで会社としてつながりのなかった場と関係性を構築することで、キユーピーの新たな活路を見出している。

「新規事業のアイデアとして出てくるものは、実現させる術やリソースが社内にはないことがほとんど。だから、外部の人との関係の中でいろいろ勉強しています。食品メーカーだけではできないことも、異業種との組み合わせで新たなビジネスになる可能性もある。もちろん直接つながらないこともありますが、違う分野の人との交流はそれだけで刺激をもらえるので、大切にしていますね。」

構想から数年、ようやく形になろうとしているものから、まだまだ構想段階のものまで。見たこともない新たなキユーピーが、宮田氏の手の中で温められ、陽の目をみるのを待っている。