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自分がここにいて
何も変わらなかったら
かっこ悪いじゃないですか。

PROFILE

森永製菓株式会社

新領域創造事業部

マネージャー

渡辺 啓太

2009年、中央大学経済学部卒。

入社後3年間の営業経験を経て、アンテナショップの店舗運営を任される。大阪、沖縄への新規出店も担当。2015年から現部署。お菓子のノベルティサービス『おかしプリント』の発案者であり、立ち上げから尽力し、事業化へと導いた。就活の時に軸として掲げた「生きた証を残したい」という想いを今も貫き、新たな挑戦を続けることで会社の風土を変えていきたいと語る。

人口が減少する日本で、
お菓子メーカーはどう変わる?
たとえば、ハイチュウは。

「ハイチュウ」、「カレ・ド・ショコラ」といえば誰もが知る森永製菓の人気商品だ。それを利用したオリジナルノベルティ製作サービス『おかしプリント』が好評だという。ユニークな営業ツールや販促ノベルティに使えるとして、利用する企業が増えている。昔ながらのブランド商品をこれまでなかったマーケットへと引っぱり出し、新たな価値を創造した。渡辺氏は、発案から立ち上げ・運営に至るまでを一手に手掛けた、このサービスの生みの親である。

「ヒントになったのは沖縄のアンテナショップでの経験でした。その場で写真を撮ってオリジナルパッケージのハイチュウを持ち帰れるという『体験』を売っていたんですが、それが好評だった。やっぱりみんな、オリジナルのものがほしいんだなって。そこで販促の市場規模や他社の状況を調べたところ、チャンスがあるなと思ったんです」

現在、渡辺氏が所属する新領域創造事業部は、その名の通り未開拓の領域に新たなビジネスを作り出していく部署だ。自ら発案するケースのほか、ベンチャー企業や外部ベンダーとの協業からも、新事業を生み出せないかと模索する。「アクセラレータープログラム」と名づけた公募事業では、起業家や事業家とタッグを組み、森永製菓の豊かなリソースを用いて彼らの斬新なアイデアを形にしていった。また、オープンイノベーションによる新商品開発をクラウドファンディングで進めるなど、時流をおさえたチャレンジも生まれている。

お客様目線と事業家目線、
そのハンドリングの難しさ。

思い返してみると、ターニングポイントは店舗経営の経験だったという。

「お台場のアンテナショップの運営を任されたことが大きかったと思います。家賃、人件費、スタッフの管理、細かい数字の部分も全部見なきゃいけなくなって。うわ、こんなことにこんなに費用がかかるのかと、現実をたたきつけられました。でもそこをどうにかしなきゃいけない。商品開発もPRも全部自分でやるからこそわかってくる部分があります。お客様目線と事業家目線、その両方を鍛えられました。今も事業を立ち上げる時に思うのは、お客様目線は非常に大切だけど、そちらに寄りすぎてもうまくいかないということです」

すべての新規事業において、お客様の中にあるニーズがスタート地点であることは間違いない。ただし、それだけを追い求めてはビジネスとして成立しない。事業家目線を持って仕組みを構築することが欠かせないのだと言う。そのためにあらゆる策を検討しなければならない。事業の将来性が見えない時には、苦渋の決断を迫られることもある。

「『おかしプリント』はもともと個人向けにもおこなっていたのですが、そこを撤退すると決めた時はしんどかったですね。社内・社外に関わらず、人を動かすには合理と情理の両方の側面が必要だと思います。ただ、ビジネスの継続性を問う場面では、数字やロジックを冷静に見つめ、合理的な選択をしていかなければなりません。個人向け事業の縮小を決めたとき(その後、撤退)、立ち上げから一緒にやってきたWeb会社さんの契約を更新できなかった時は、申し訳ない気持ちでいっぱいでした」

厳しい表情を浮かべながらその心境を語ってくれた。しかし、こうした苦い経験も正面から受け止めることが彼の強さであり、それが成長へと直結しているに違いない。一つひとつの経験を自分の中で消化しながら、上へ上へと突き進んでいく渡辺氏の姿が印象的だ。

新しいことがしたい。
血が騒いだ、入社3年目。

もともと営業部だった渡辺氏に転機が訪れたのは入社3年目。社内で行われたビジネスプランコンテストがきっかけだった。

「大学時代にビジネスコンテストに出ていたこともあって、公募の話を聞いたとき、血が騒いで。何か新しいことに挑戦したいという気持ちが大きかったこともあり、応募しました。そのアイデア自体は通らなかったのですが、この時の動きを見てくれていた方がいて、後にアンテナショップのプロジェクトにアサインされることになったんです」

当時の仕事が評価され、2015年に現部署へと移った渡辺氏。その開拓精神と、ものごとを実現させていく推進力を見ていると、ベンチャー企業への就職や独立して経営者になることは考えなかったのか?という疑問さえ湧く。

「就活の時はベンチャー企業も見ていましたが、そっちには行かなかった。一言で言えば、勇気がなかったのかなと思いますね。受ける人たちはみんなすごく意識が高いと感じましたし、この人たちに勝つ自信はないなと(笑)」

謙遜を交えながら、自身のモチベーションの所在についてこう続けてくれた。

「自分の強みは責任感の強さかなと思います。たとえば、うちの事業部は売上も利益も目標数字は設定されてないんですが、その分個人の人間力が問われてくる。僕は、期待を裏切りたくないんです。たとえば3年この部署にいて、ここが何も変わっていなかったらかっこ悪いじゃないですか。どこの部署にいても大切にしているのは、すべてを自分事にすることです。分からないことだらけだったとしても、自分事にすれば、思考停止の状態ではいられないと思うんです。自然と自ら学ぼうとして、本を読んだり、人に聞いたり、いろいろ行動できるはず。難しい状況にいても、とにかく何をどう始めるかを考え続ける。あきらめない、逃げ癖をつけないことが大切だと思っています」